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うつ病はなぜ生じるのか(「うつ病をなおす」より引用まとめ)

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理論的には遺伝子がほとんど同じはずの一卵性双生児の一方がうつ病にかかった場合、もう1人も鬱病になる確率は50~70%くらいであり、非常に高い。このことから、うつ病に対する遺伝子の関与が大きいことは明らかであるが、残りの30〜50%はうつ病にならないことから遺伝子以外の病因が大きいことも明らかである。

このような場合、「環境と遺伝の相互作用により、病気が起こる」と考えるとわかりやすい。

ただし、「全人類の10人に1人以上が生涯に1度以上うつ病にかかる」というデータがあるくらい、うつ病が一般的な存在であることを考えると、うつ病の遺伝子とは「本来必要な遺伝子」ではないかと思われる。本来、非常に役に立っているが、ある種のストレスがかかると、裏目に出てうつ病の形をとる、という図式が浮かんでくる。

そのことを考えるために、うつ病患者の性格に注目する。

うつ病性障害の場合、「凝り性、人に配慮する」など(メランコリー親和型性格)、双極性障害では「エネルギッシュで統率力がある、社交的、温かい」など(循環気質)の性格が背景にある。

この2つの気質は違った性質のように見えて、実は両方とも、社会秩序に対するこだわりがあり、そこから他人に対する配慮性とサービス精神が現れるように思える。

こういった気質、またその背景にある遺伝子は明らかに社会に必要で、生きる上でも有利なことは間違いない。有利であるため、そういう遺伝子が人間社会に広まったと考えられる、これを「こだわり遺伝子」と呼ぶことにする。

この遺伝子は、事態がルーティン化して「何が大切か」が見えている時は、社会のルールとして答えが見えているので、行動が成功しやすいが、反対に「新たな状況」では都合が悪い。

新しい環境では答えが分からないので試行錯誤が必要であり、過去の体験から柔軟かつ勘を鋭くして能率よく行動できる力が必要であろう。

ところがうつ気質の人は、優先順位がつけられず、全ての行動を試そうとするという効率の悪い選択をしてしまう。それで疲弊してしまう故に、「こだわり遺伝子」に都合の悪い環境でうつ病は生じる可能性が高いと言える。

現代社会がこのような(安定期に最も強さを発揮する)遺伝子にとって都合の悪い環境になってきたことが伺えるが、それではこういう遺伝子が淘汰されて消えていくかというとそうではなく、人類史は「混乱期→再出発期→安定期」を繰り返しているので、遺伝子は残っていくと考えられる。

「こだわり」の特質ゆえに、都合の悪い環境でストレスを多く受けることにより、うつ病を引き起こすことを図7にまとめる。

新しい環境でこだわり性は裏目に出るが、それを破棄して他パターンを試みることは非常に困難なことであり、むしろこれまでの成功パターンをさらに強化することで、事態を乗り切ろうとする。さらにこだわり、さらに几帳面になろうとした結果、エネルギーを使い尽くし、うつ病を発症する。

次に治療について考える。図7の「重みづけ機能不全」は遺伝子であり治療不可である。「こだわり性」は長年にわたって形成されたものであるため容易には変えられない。「性格特徴」は比較的修正しやすいので、精神療法の目標はこの次元に置くべきであろう。「うつ病」は抗うつ薬の出番である。

うつ病と脳内物質の関係で最も注目されているのが、セロトニンである。セロトニンは感情のコントロールや睡眠、食欲などを微妙に調整する役割を担っている。このセロトニンの機能不全がうつ病をもたらすという考え方が多くの学者の賛同を得ているが、その根拠は、うつ病に効果のある薬の大半はセロトニンの働きを強める作用を持つことである。セロトニンを強めればうつ病はよくなるのだから、逆にうつ病はセロトニンが弱いのだろう、と推察されている程度なのである。

セロトニンは、うつ病の本質に届いている感じはしない。表層の気分に対する効果だけである。薬物による本質的な治療のためには、遺伝子治療などを視野に入れねばならないのかもしれない。

うつ病の治療、特に再発予防の大部分は、精神療法や社会訓練のレベルにあるのではないかと考えられる日本では薬物治療に比べてその部分が遅れている。これは医者だけでできることではなく、多くの領域からの専門家の参画が必要なことに違いない。

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